『社会的協力論(改訂版)』放送大学教育振興会 2020年

「一者関係・二者関係・三者関係」の社会構成

この社会的協力論では、 人びとの協力関係の在り方とそれぞれの社会組織の形成原理に関して、 「一者関係・二者関係・三者関係」という一連の整序された推論形式を採用している。協力関係のタイプ分けを行っている。一者関係として「支配タイプ」の協力関係、 二者関係として「交換タイプ」の協力関係、 三者関係として「互酬タイプ」の協力関係などである。

社会的協力と複雑な社会

なぜ人びとは協力を行うのか、なぜ人間にとって協力活動が重要なことなのか、 ということを本書全体で追究している。一人で物事を行うよりも、 複数の人びとが行う方が全体としてうまくいく場合が多い。本書では、このような協力の持っている「集団の潜在力」に注目している。このような不思議な力がなぜ生ずるのか、そして他方で、どのような条件のもとで、非協力に陥っていくのかについても考えている。

「社会的」協力という、この「社会的」ということを強調する本書の意味は、どこにあるといえるのだろうか。協力という活動は、「協力が成立しているところよりも、 むしろ協力が存在しないところにおいてこそ求められている」という逆説的な性格を持っている。個人的な協力と社会的な協力の違いはここにある。協力は複数者の加わるチームで行われる場合が多いが、実際には個人が勝手に加わろうとしてもチームのメンバーには制限がある。2者関係まではうまくいっても、さらに3者関係を結ぶには限界がある。したがって、いかにチーム以外の人びとがメンバーとして成り立つことができるのかということが、相互作用として生成される協力というものの原点にある。

もちろん、「一者関係」として個人が協力に努力することはありうるが、 それは「二者関係」としての相互作用によって補完されればより強固なものになるであろう。さらにここで、介在者が媒介する「三者関係」にまでメンバーの枠を広げることができれば、社会的協力の意味が違ってくる。このようにして、協力の在り方が社会の在り方を決定していくという意味において、 本書では個人的協力よりも、社会を形成する力を持つと考える「社会的協力」ということに意味を見出している。「一者関係・二者関係・三者関係」という、重層的で複雑な人間社会のあり方を追究している。

 

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