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『貨幣・勤労・代理人−経済文明論』2017年 左右社
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『椅子クラフトはなぜ生き残るのか』2020年 左右社
古代文明以来、人間とともにあり、椅子職人たちの手でつくられてきた椅子は、近代を迎えて大きな転機を迎える。大量生産と機械化の時代を潜り抜け、手づくりの小規模生産が生き残るのはなぜか。ものづくりの将来と日本の経済社会を見据え、クラフツ経済の現代的課題と強みをさぐる。
手仕事や工芸、つまりクラフトは最も身近で生活と共にある道具であると同時に、経済社会全体にも作用を与えていることを本書は問うている。家具の消費が減少しているにもかかわらず、椅子クラフトを手がける小規模生産者の割合は増えている。クラフト文化は特有の多様性と柔軟な手づくりを持っている。本書はなぜ存続するのかを分析していく。
歪みのある手づくりの作品は、機械大量生産の場では失敗作になるが、クラフト文化では「有益な失敗」と呼ばれる。完璧ではないこと、不完全性を受け入れることで、職人による小規模生産が現代においても可能となる。他方で、椅子は駅や公園などのベンチなど社会的機能を通して社交性・環境・ネットワークを形成する。椅子クラフトは今日まで持続し、生活全体の中で、身振りや活動やコミュニケーションの作用に関わっている。